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東京高等裁判所 平成6年(ネ)4253号 判決

控訴人

戸澤保文

控訴人補助参加人

安田火災海上保険株式会社

右代表者代表取締役

有吉孝一

右訴訟代理人弁護士

南出行生

辻佳宏

控訴人補助参加人

千代田火災海上保険株式会社

右代表者代表取締役

鳥谷部恭

右訴訟代理人弁護士

溝呂木商太郎

被控訴人

佐々木ミエ子

右訴訟代理人弁護士

菅野兼吉

主文

原判決を次のとおり変更する。

一  控訴人は、被控訴人に対し金二八八一万七二〇二円及び内金二六八一万七二〇二円に対する平成三年四月二日から、内金二〇〇万円に対する平成五年四月二五日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被控訴人のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用及び参加費用は、第一、二審を通じてこれを五分し、その二を被控訴人の負担とし、その余の訴訟費用は控訴人の、その余の参加費用は、それぞれ当該費用にかかる補助参加人の負担とする。

四  この判決は、被控訴人勝訴部分に限り仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

(控訴人及び補助参加人安田火災海上保険株式会社)

一  原判決中、控訴人敗訴部分を取り消す。

二  被控訴人の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、第一、第二審とも被控訴人の負担とする。

(被控訴人)

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は、控訴人の負担とする。

第二  当事者双方の主張及び証拠関係

原判決事実摘示並びに原審及び当審各記録中の証拠目録記載のとおりであるから、これらを引用する。

理由

一  原判決理由第二説示(控訴人関係部分)に次のとおり加除訂正を加えたうえ、これを引用する。

1  六丁裏九行目の「役員であり、」を「従業員であり、控訴人は取締役をもしていたものであるが、同年」に改める。

2  七丁表一行目の「大谷も交えて」の次に「全員が」を加える。

3  七丁表八行目の「被告戸澤、故上原及び古谷が」を「控訴人が助手席に、故上原と古谷が後部座席にそれぞれ」に改める。

4  七丁表九行目から同一〇行目の「被告戸澤が」を「故佐々木が控訴人に「代わろうか」と言い、控訴人もまだ本件自動車を運転したことがなく、これを運転してみたいとの興味に駆られていたので、直ちに」に改める。

5  七丁裏末行の「本件自動車」から八丁表八行目末尾までを次のとおり改める。

「当初は自ら本件自動車を運転して出発し、途中から控訴人と語らって運転を交代したもので、その後も助手席において控訴人の運転を見守っていたのであるから、控訴人とほとんど同等の運行支配を有していたものと評価すべきである。

しかも、故佐々木は、控訴人らとともに飲酒したうえドライブに出たもので、控訴人が飲酒運転をすることを十分に承知のうえで運転を交代したものであること、また控訴人が、一般道路において、時速約一〇〇キロメートルという高速度で無謀ともいうべき危険な運転をしているのに、故佐々木は助手席にあって容易にこれを制止することができる立場にあったにもかかわらず、なんらかの注意をした形跡も窺えず、シートベルトの着用もしていなかったこと、これら、本件事故に至る経過や事故の様態に照らしてみれば、故佐々木についての損害の算定にあたっては、少なくとも四割の過失相殺を加えるのが相当というべきである。」

6  八丁裏末行冒頭から九丁表一行目末尾までを次のとおり改める。

「(三) 慰謝料 金一八〇〇万円(金一五〇〇万円)

故佐々木の慰謝料は、後述のとおり、被控訴人に搭乗者傷害保険の死亡保険金一〇〇〇万円が支払われたことをも考慮にいれると、一五〇〇万円が相当と認める。」

7  九丁表二行目の「金四六七二万八三三八円」を「金四三七二万八三三八円」に改める。

8  九丁表三行目及び六行目の「金三二七〇万九八三六円」を「金二六二三万七〇〇二円」にそれぞれ改める。

9  九丁表八行目及び同裏一行目の「金七〇万円」を「金六〇万円」にそれぞれ改める。

10  九丁裏四行目の「前記1(五)の」から同六行目末尾までを「前記1(五)の金二六二三万七〇〇二円と2の金六〇万円の合計金二六八三万七〇〇二円からこれを差し引くと、その残額は金二六八一万七二〇二円となる。」に改める。

11  一〇丁表四行目の「しかしながら、」から一一丁裏一行目末尾までを改行のうえ、次のとおり改める。

「しかしながら、搭乗者傷害保険の死亡保険金は、これを搭乗者の損害賠償額から控除することはできないが(最高裁判所平成三年(オ)第一〇三八号平成七年一月三〇日第二小法廷判決参照)、その保険料を加害者または加害者側が負担している場合には、右保険金は見舞金としての機能を果たし被害者ないしその遺族の精神的苦痛の一部を償う効果をもたらすものと考えられるから、これを被害者またはその相続人の慰謝料の算定にあたって斟酌するのが、衡平の観念に照らして相当というべきである。

乙第一五号証及び弁論の全趣旨によれば、右搭乗者傷害保険の保険料は原審被告会社が負担したものであること、本件損害賠償金も原審被告会社が保険料を負担するいわゆる任意保険から支払われる関係にあることが認められ、このことに前認定のとおり、控訴人は取締役として同社の経営にも関与していたことを考慮すると、右搭乗者傷害保険の保険料は、加害者側が負担していたものと認めるべきであるから、故佐々木の慰謝料の算定にあたっては、前記の一〇〇〇万円の死亡保険金の支払をも考慮に入れることにし、その慰謝料(過失相殺前の)を一五〇〇万円と認めるのが相当である。

12  一〇丁裏八行目の「金三三三九万〇〇三六円」から同九行目の「金三三三九万〇〇三六円」までを「金二六八一万七二〇二円と4の金二〇〇万円の合計金二八八一万七二〇二円及び右金二六八一万七二〇二円」に改める。

二  よって、原判決を右の趣旨にしたがって変更することとし、訴訟費用の負担について、民訴法九六条、九四条、八九条を、仮執行宣言につき同法一九六条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 町田顯 裁判官 髙柳輝雄 裁判官 中村直文)

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